第37回心理学講義『スキーマ療法』第1回

『スキーマ療法』第1回

※教本の一部をご紹介します。

1.はじめに

スキーマ療法は、認知療法を発展させたもので、心のより深い部分にアプローチします。認知療法においては、ある状況のときに自動的に生じた思考に焦点を当てて改善していくというものですが、スキーマ療法はそのような思考が生じるもととなるスキーマ(思い込み、信念、観念)に焦点を当て、改善していこうという療法で、米国の心理学者ジェフリー・E・ヤングが考案した心理療法です。
認知療法が思考に取り組むのと同じように、スキーマに取り組むのがスキーマ療法です。 では、これから紹介していきますが、はじめに、その前提となる認知療法を振り返ってみます。


2.認知療法

私たちは日々さまざまな出来事に遭遇し、その出来事に対して、さまざまな捉え方・見方・受取り方をしています。そして、どのような捉え方をするかで私たちの感情は左右されています。

今までもよく出した例をあげます。

街で知人と偶然すれ違ったので挨拶をしたが、知人は素知らぬふりで行ってしまった。このような出来事(状況)のときに、どのような思い(思考)が生じるか、この思考は自動的に生じるので、「自動思考」と認知療法ではいいます。

 屬┐叩何で知らんふりするの!」 → 怒り
◆峪笋里海鳩ってるのかな」 → 不安、落ち込み
「何か心配ごとでもあるのかな」 → 気遣い

このように、ある出来事に対してどういう思考が生じてくるかによって、心の状態に違いがあります。外的な出来事は同じです。それに対して自分がどう色づけするかで、見える世界、経験する世界が違ってきます。
そして、自分を苦しめる自動思考を何とかしていこうというのが認知療法です。

それぞれの人には、それぞれの人特有の物事の捉え方(認知のパターン)があって、それが感情に影響を与えています。例えば、いつでもネガティブな考え方をしている人は、憂鬱な気分に悩まされることになります。憂鬱になり、感情が不安定なため社会に適応できにくい人のなかには、自分の心を苦しめるような片寄った極端なものの見方(認知の歪み、マイナスの心のくせ)をしていることが原因と考えられる場合が多くあります。

認知とは簡単に言えば、外界をどう捉えるかということです。それが「歪んで」いるとは、例えて言えば、外界を映す心の鏡がグニャリと曲がっていて「歪んで」いるということで、現実をそのまま受けと止めず、極端な偏った捉え方をするということです。少しの失敗を大げさに捉え「自分の人生はもうおしまいだ」と考えてしまうことなどがその典型です。このように捉えれば心は落ち込みます。

ですから、自分の「認知の歪み」のパターン、つまり「心のくせ」を知り、それを修正し、柔軟性の高いものに変化させることができれば、気分・感情のコントロールすることに役立ちます。

具体的に説明すれば、たとえば、自分に苦しみをもたらした出来事に関して
1.いつ
2.どんな状況だったか
3.その時、心に浮かんだ考え(自動思考)
4.どんな感じがしたか(不安、落ち込み、焦り、イライラ、怒りなど)などを内省して記述し、
5.自分の「自動思考」が、「認知の歪み」のどのパターンに分類されるか考え、
6.他の極端でない適正なものの見方がないか検討し、自分の思考が極端であったことを認識し、適正なものの見方に変えていく。
ということを行います。

※認知療法については、2014年GWセミナー心理学講義「認知療法、マインドフルネス認知療法」を参照してください。


3.18の早期不適応的スキーマ

自分を苦しめるスキーマをスキーマ療法では「早期不適応的スキーマ」とよんで、18に分類しています。

(1)早期不適応的スキーマとは何か
「早期」という言葉は、人生の早期(子どものころ)に形成されたものということを意味します。
「不適応」というのは、自分を苦しめるということを意味します。

スキーマは、自分を守るため、生きやすくするために形成するもので、早期不適応的スキーマもそうです。子どものころは、自分に役立つ、自分を守るためのスキーマだったものが、大人になって、かえって自分を苦しめるものになってしまうというのが早期不適応的スキーマです。
虐待やいじめにあっている子どもが「人は信用できない」と思うことは、その最中においてはその子を守る働きがある場合もあると考えられます。しかし、大人になっても「人は信用できない」と思い込んでいることは、その人にとってマイナスになることは多々あるでしょう。

このように子ども時代には、役に立つ意味のあったスキーマが、大人になってから逆にその人を生きにくくさせているものが早期不適応的スキーマです。

自動思考の元となるのがスキーマです。
先の例で「えっ!何で知らんふりするの!」という自動思考が生じてくる元のスキーマというものがあります。また、「私のこと嫌ってるのかな」という自動思考が生じてくる元のスキーマというものがあります。

今ここでは、こういうスキーマがあるんだ、ということをまず知ってください。

(2)18のスキーマは5つの領域に分かれている。
(『自分でできるスキーマ療法ワークブック Book2』伊藤絵美著 星和書店 参照)

1)第1の領域:人との関わりが断絶されること
仝捨てられスキーマ
「人は自分を見捨てていく存在だ」「自分はいつも人に見捨てられる」というスキーマ。このスキーマを持つ人は、自分が他人と安定した関わりを持つことがイメージできない。友人、恋人、家族など誰でもいつかは自分を捨てていくと強く信じている。

特徴:見捨てられるのがこわくて、人にしがみつく。逆に見捨てられる前に自分から人間関係を断ってしまう人もいる。また、見捨てられ傷つくくらいならはじめから人との関係を持たないという人もいる。

不信・虐待スキーマ
「人を信じたら自分はひどい目に遭う」「人は自分を傷つける存在だ」「人は自分を食いものにする存在だ」などと考え、人を信じない。

特徴:人を疑い、人に対して心を開かない。人から親切にされると「何か企んでいるのではないか」と疑う。しかし、本当は人を信じたい。「この人は信じてもいいのでは」という人には過剰に期待を寄せてしまうことがある。そして、相手を本当に信じられるかどうか、相手を監視したり、試したりする。また、このスキーマをもつ人のなかには、自分がやられる前に相手を攻撃してしまうという行動に出る人もいる。

「愛されない」「わかってもらえない」スキーマ
「自分は人に愛される存在ではない」「自分のことをわかってくれる人はいない」と考える。自分は誰からも愛されない、理解されることがない、守ってもらえない存在。

特徴:「愛されたい」「わかってもらいたい」という欲求が強い。それを強く人に向けてくる人もいるが、その一方、「どうせ自分なんか愛されるわけがない」と諦めて、人との関係を深く持とうとしない、さらには人との関係をもとうとしない場合もありうる。

し膣戞γ僖好ーマ
「自分は欠陥人間だ」「ダメ人間」という思いがあり、「そういう自分は人間として恥ずかしい」という思いもある。

特徴:自分の「欠陥」が人に分からないように振る舞う。自分がダメな人間であるとわからないためには、人との接触・関わりをできるだけもたないようにする。自分の失敗に敏感で、それを目撃した人とは関係を断ってしまったりする。自分が「欠陥人間」であることが人にわかって拒絶されることに怯えている。また、欠陥のない人間でありたいという思いから、「完璧にやらなければいけない」という枷を自分にきせて、窮屈な状態に追い込まれることにもなることもある。

ジ瀕スキーマ
「自分は変わり者で人と交われない」「世界から孤立している」など孤立感、孤独感が強い。

特徴:社会的場面において、端っこでポツンとしている。自分から人に話しかけない。
その一方で、「どこかに帰属したい」「居場所がほしい」「中心人物になりたい」という思いもあり、何らかのコミュニティやネットの世界でその欲求を満たそうとする場合もある。

2)第2の領域:「できない自分」にしかなれないこと
〔鞠宗Π預献好ーマ
「自分は無能だ」「自分は何もできない人間だ」と感じ、何もできない無能な自分だから他者に助けてもらうしかない、依存するしかないと考える。

特徴:新しい課題に尻込みすることが多い。無能な自分には出来ないと思ってしまう。そして、何かする場合には、人に頼ろうとする。また、「できない」と信じているので、物事を先送りにする。

△海寮い砲浪燭あるかわからないし、自分はいとも簡単にやられてしまう」スキーマ
「いつ何時、恐ろしいことが起こるかわからない、自分は対処できずやられてしまう」という思い。恐ろしいことというのは、自分の健康上のことであったり、災害や事故であったりする。

特徴:「何か起きるのではないか」と常にビクビクしている。身体の異変や周囲の状況変化に敏感に反応して怯える。

4き込まれスキーマ
「いつも誰かに巻き込まれていて、"自分"というものがなく、自分は自分を生きていない」という感覚。

特徴:「誰か」の思考や感情が自分の体験であるかのように感じ、自分の感情・欲求より。その人の感情や欲求に目を向け、それを満たすことによって自分の感情や欲求を満たそうとする。自分がないので一人でいることができず、常に誰かと一緒にいようとする。その一方で、常に一緒にいることに息詰まりを感じて感情を爆発させることもある。
「自分がない」という空虚感から、お酒や薬物やその他のものに依存して、自分に刺激を与える行動をとる人もいる。

ぜ最團好ーマ
「自分はいつも失敗する」「なにをやっても失敗する」という思い。

特徴:自己卑下する。失敗を恐れ新しいことにチャレンジしようとしない。先延ばしにする。

販売価格: 1,100円(内税)
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