第29回心理学講義 『子どもの発達・人格形成にはたす父親の役割』

第29回心理学講義 『子どもの発達・人格形成にはたす父親の役割』

◆内容一部ご紹介

愛着理論でもみてきたように母親と子どもの関係は、子どもの生命維持を土台とした生物的なものである。それにひきかえ父親はどうだろうか。

ほ乳類で子育てに関わる父親の割合は3%程度であるという。しかも、直接的に子育てに関わるのではなく、母子を外的から守るというような間接的なものである。

それに比べ人間は家庭を持ち、父親も養育にあたる。このようなことは人間に特有なものと言ってよい。それは、人間社会が高度に組織化、役割分化した社会であることとも関係があると考えられる。

子どもの発達・人格形成にはたす父親の役割というものを考えるにあたって、このあたりのことがポイントとなると思われる。


1.父親の役割

人間は単に体が成長するだけでは、大人になったとはいえない。社会のなかで社会の一員としてある一定の役割を果たし、自立して生きていけるようになって大人と言える。

高度に組織化した人間社会では、そこで生きて行くにあたってのルールや規則・規制がある。このような社会で生きるうえで必要な社会的・文化的ルール・行動様式を身につけていくためには、子どもの身体的成長に気を遣う母親的要素だけでは足りない。そこで父親の役割が出てくる。

このあと講義のなかで何回か言及していくことになるが、まずは、父親の役割というものを列挙してみることにする。

・強く頼もしい庇護者 →子どもは安心感を得ることができる。
・怖い父親 →禁止・抑止→子どもは欲望のコントロールを学ぶ。
→また、社会でのルール・規範を学ぶ。社会性を身につける。
・厳しさ → 近寄りがたさ、距離をとる →自立、主体性
→ 現実、社会の厳しさを教える。
・興味や活動の刺激 →子どもの関心を外界へ向け、行動的にする。
・成長のモデル(自我理想) →自立、行動のモデル、生きる見本、生きる力


2.発達段階的にみた父親の役割

【言葉の説明】エディプス・コンプレックス:
〔オイディプス王が父を殺して母を妻としたギリシャ神話にちなむ〕
精神分析の用語。子供が無意識のうちに,異性の親に愛着をもち,同性の親に敵意や罰せられることへの不安を感じる傾向。フロイトにより提唱され,多くは男子と母親の場合をさす。 → エレクトラ-コンプレックス(Weblio辞書より引用)


4歳頃、精神分析でいうエディプス期に入ると、父親は母親の関心・愛情をめぐるライバルとなる。しかし、父親は万能に見え、適わない存在。自分を抑え込む強い力をもつものとして恐怖の対象にもなる。ここで子どもは父親に対する愛着と恐怖・闘争の間で葛藤する。

そしてその後、子どもは、父親には適わないことを認識し、母親を独占しようという幼い願望を諦めるようになる。

次の段階で、父親を理想像として同一化しようとする。強い適わない存在に自分もそのようになろうとする。そうすることで、父親への愛着と恐怖・闘争の葛藤を乗り越えることができる。

(以上は、4歳くらいから12,3歳までの間に漸次起き、個人差があるので、明確な年齢はしめせない)

やがて思春期(13〜18歳くらい)になると、父親にずっと同一化し続けることも越えなければならない。父親とは違う自分の人生を歩いて行くためには、次の段階に進む必要がある。父親から距離を取り、父親に反発するようになる。いわゆる反抗期である。

この時期は母親との関係も変化する。それまで甘える対象であった母親を、何かとうるさいと感じるようになり、反発するようになる。これも自立の現れである。母性の受容する力=飲み込む力から脱却して自立しようとしているのである。

このとき、父親の役割がある。子どもを手放せない(子離れできない)母親を支える役割である。親離れしていく寂しさを共有し、子どもの成長を喜ぶことを、ともに行うことによって、母親の子離れを促進させる。そいう形で父親は子ども成長の手助けをする。



3.父親の不在(役割の欠如)の影響

父親の不在という場合、死別や別居・離婚、長期出張などによって物理的に父親がいないということだけでなく、一緒に暮らしていても存在感がなく、父親としての役割をはたしていないというような、機能不全の状態(機能的不在)もその影響は同じであるという。もちろん、子どもがいくつくらいに不在状態になったかで、与える影響は違ってくる。

現代は父親の存在が希薄になっている時代である。普通の家庭でも機能的な父親不在の状態は珍しいことではないのかもしれない。

では、父親の不在がどのような影響があるかをみていく。

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